【探求】臨時休校前と臨時休校中における小学校児童の宿題と学習意欲

本自習室の生徒が探求学習で、「臨時休校中の宿題と学習意欲の関係」について調査いたしました。本ページにその結果をまとめておりますので、興味のある方はご覧ください。

 

目的

新型コロナウイルスの影響により、多くの学校で長期の臨時休校となった。そして、臨時休校中の学習として、多くの宿題が児童に出された。しかしながら、宿題の学力向上に対する効果の低さは、多くの研究で示されている[1]。特に、Cooperらの研究によると、小学校児童の場合においては、宿題に費やした時間と学習成果の相関はほぼゼロということが示されている[2]。そのような現状で、学力だけに注目せず、児童における学習意欲が低下しているという意見もある。以前、私は、宿題における児童の学習意欲を高める方法について調査した[3]。その結果、宿題の出し方が、児童への学習意欲に影響があることが示唆された。特に、長時間の宿題は学習意欲を低下させる可能性があることが示唆された。これより、今回の長期休暇における宿題についても同様に、学習意欲への負の影響があると考えた。

そこで本研究では、まず臨時休校前/中での学習意欲への影響について調査した。さらに、学習意欲低下を抑制することのできる宿題の課し方を明らかにするために、臨時休校中の宿題の量・内容等における学習意欲への影響の大きさについて調査した。

 

研究方法

図1 学年ごとのアンケート回答者数

小学校児童102人に、臨時休校前/中における宿題と学習意欲に関するアンケートで実施した。アンケートは、グーグルフォームで作成し、オンライン上で回答を収集した。

学年ごとのアンケート回答者数を表した円グラフを図1に示す。アンケート回答者数は、1年生13人、2年生27人、3年生13人、4年生12人、5年生13人、6年生24人であった。

アンケートの内容としては、好き嫌い(宿題/宿題以外の勉強、以下勉強と省略する)、宿題内容(復習/予習/難易度)、学習時間(宿題/勉強、休日/平日)、学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)に関して質問した。実際に使用したアンケート内容を添付資料1に示した。

アンケート結果から質問ごとに臨時休校前/中の差・平均値・標準誤差を求め、対応のある2標本t検定を用いてそれぞれの有意差を確認した。また、宿題内容の増減ごとに児童をグループ化し、それぞれの学習意欲の増減について平均値±標準誤差を求め、対応のない2標本t検定を用いてそれぞれ有意差を確認した。さらに、学習時間と学習意欲に対して相関を求めた。

 

結果・考察

臨時休校前/中における平日/休日の宿題/勉強時間の平均値±標準誤差のグラフを図2345に示す。臨時休校前/中の宿題/勉強時間の平均値・分散・P値を表1に示す。図2-5表1より、平日/休日の宿題/勉強の時間が有意に増加している。

図2 臨時休校前/中の平日の宿題時間
図3 臨時休校前/中の平日の勉強時間
図4 臨時休校前/中の休日の宿題時間
図5 臨時休校前/中の休日の勉強時間
表1 臨時休校前/中における平日/休日の宿題/勉強時間の平均値・分散・P値

 

臨時休校前/中の学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)の平均値±標準誤差を図678に示す。臨時休校前/中の学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)の平均値・分散・P値を表2に示す。

図6-8表2より、自主性、達成感、モチベーションは有意に低下している。図2-57より、児童の宿題時間が増加するとともに達成感が低下する傾向にあった。前回の調査では、宿題時間の長い児童ほど達成感が低い傾向にあった。その原因として、長時間の宿題で疲労感がでるため達成感が低下したと考えた。今回の結果についても同様の理由であると考えられる。一方、前回の調査では自主性が高い児童ほど宿題に費やす時間も増える傾向にあった。しかしながら、図2-6よると今回の調査では宿題時間の増加とともに自主性が低下した。前回は、普段の宿題に対する自主性の高低による時間のかけ方を調べたものである。宿題時間の長い人は自分から勉強の中で分からないところを調べているため自主性が高いと考えられ、結果は内発的動機付けによって影響されたものと考えられる。一方、今回は臨時休校中における宿題量が普段と比べて多いことで、相対的に宿題時間が長くなっていると考えられる。そのため結果は、やるべき大量の宿題に対する外発的動機付けによって影響されたものと考えられる。外発的動機付けは学習意欲を下げる傾向があると一般的に知られている。図2-58より、宿題時間の増加とともにモチベーションも低下した。モチベーションについても、自主性と同様に大量の宿題による外発的動機付けの影響で低下していると考えられる。

図6 臨時休校前/中の自主性
図7 臨時休校前/中の達成感
図8 臨時休校前/中のモチベーション
表2 臨時休校前/中の学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)の平均値・分散・P値

 

時休校前/中における宿題/勉強の好き嫌いの人数を表したグラフを図910に示す。
図910より、臨時休校前/中で宿題、勉強が嫌いな児童が有意に増加している。図79から臨時休校中に宿題嫌いな生徒が増加するとともに、達成感が低下する傾向があると考えられる。これは前回の調査での、宿題の嫌いな児童が多いほど達成感が低い児童が多い傾向と同様に、宿題の嫌いな児童は宿題に対する意欲がないので達成感が低下するためだと考えられる。

図9 臨時休校前/中における宿題の好き嫌いの人数
図10 臨時休校前/中における勉強の好き嫌いの人数

 

臨時休校前/中における復習の変化量と学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)の差の平均値±標準誤差のグラフをそれぞれ図111213に示す。

図11より、復習量を増やすことで有意に自主性の低下が大きくなる。図12より、復習量の増減に対して有意に達成感の低下が大きくなる。
よって、復習量を変えることで、学習意欲の低下を大きくする可能性があると考えられる。特に、復習量の増加は大きな低下を誘引する可能性があると考えられる。

図11 復習の変化量と自主性の差
図12 復習の変化量と達成感の差
図13 復習の変化量とモチベーションの差

 

臨時休校前/中の予習の変化量と学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)の平均値±標準誤差を表したグラフをそれぞれ図141516に示す。

図14-16より、予習量の変化による学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)の有意な低下の差はない。

図15より、予習量を減らした場合は、達成感の平均値と、標準誤差が増加している。これは、予習量が減った人数が5人のみであり、そのうち1人で大幅に達成感が向上しているためである。他の4人のデータでは、1人が-4点の現象、その他の回答では変化はなかった。そのため、予習量の現象による達成感への影響も少ないと考えられる。
予習の宿題を出すことで新しいことを学ぶことができる。この結果より、予習による学習意欲低下への影響はないと考えられるため、積極的な予習の宿題を出すことは良いかもしれない。

図14 予習の変化量と自主性
図15 予習の変化量と達成感
図16 予習の変化量とモチベーションの差

 

臨時休校前/中の難易度の変化量と学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)の平均値±標準誤差を表したグラフを図171819に示す。

図17-19より、難易度の変化による学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)の低下に有意な差はなかった。また、難易度低下にともない標準誤差が向上する傾向がある。これは、難易度を下げることで、本来の学力が低い生徒は、簡単に解くことができると感じて学習意欲が上がり、一方で、本来の学力が高い児童は、簡単過ぎてやる気をなくし学習意欲が下がるためだと考えられる。そのため、安易な難易度の変化は、有意な低下の増大につながらなくても、慎重に行うべきであると考えられる。個人ごとに難易度を変えた問題を出すのも有効かもしれない。

図17 難易度の変化量と自主性の差
図18 難易度の変化量と達成感の差
図19 難易度の変化量とモチベーションの差

 

臨時休校前/中における平日/休日の宿題/勉強時間と学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)に関する表を表3に示す。

表3より、宿題時間と学習意欲に大きな相関は見られなかった。よって、宿題/勉強時間は学習意欲に対して影響が少ないと考えられる。したがって、学習意欲という側面においては、大量の宿題/勉強をやることよりも、図17-19からも考えられるように、個人に合わせた質の良い宿題/勉強をすることが大切であるかもしれない。

表3 臨時休校前/中における平日/休日の宿題/勉強時間と学習意欲(自主性/達成感/モチベーション)

 

 

4. 結論

臨時休校中は休校前と比べて、勉強に対する学習意欲が大きく低下している。宿題時間は増えていることから多くの宿題が出されていることも原因の一つだと考えられる。

児童の学習意欲の低下を小さくするためには、復習量を大きく変えないことが効果的かもしれない。また、新しいことを学ぶことができる予習の宿題は児童の学習意欲に大きな影響を与えないと考えられるため、課すことに問題はないと考えられる。難易度に関しては、全体として変えるのではなく、個人に合わせて設定することで児童の学習意欲の低下を抑えられるかもしれない。

これらより、学習意欲の側面において、宿題は量だけではなく内容も考えて課すことが大切であると考えられる。

 

5. 参考文献

[1] ジョン・ハッティー : VISIBLE LEARNING 教育の効果 メタ分析による学力に影響を与える効果と可視化. 図書文化, 2018, pp.248-251.

[2] Cooper, H. M., Lindsay, J.J., Nye, B., & Greathouse, S.: Relationships among attitudes about homework, amount of homework assigned and completed, and student achievement. Journal of Educational Psychology, 90(1), 1998, pp.70-83.

[3]生徒情報のため伏せさせていただきます。

 

添付資料

実際に使用したアンケート

臨時休校前/中における宿題に関するアンケート

1. 回答者は誰ですか

小学生・保護者・その他

2. 学年

1年生・2年生・3年生・4年生・5年生・6年生

3. 勉強をすることが好きか(臨時休校前)

好き・嫌い・どちらとも言えない

4. 勉強をすることが好きか(臨時休校中)

好き・嫌い・どちらとも言えない

5. 宿題をすることが好きか(臨時休校前)

好き・嫌い・どちらとも言えない

6. 宿題をすることが好きか(臨時休校中)

好き・嫌い・どちらとも言えない

7. 復習(授業で習ったことのある)問題

増えた・減った・量は変わらない

8. 予習(まだ授業で習っていない)問題

増えた・減った・量は変わらない・今まで出たことがない

9. 難易度

難しくなった・易しくなった・変わらない

10. 臨時休校前の1日あたりの平日の宿題時間

0-30分・30-60分・60-90分・90-120分・120-150分・150-180分・180分以上

11. 臨時休校中の1日あたりの平日の宿題時間

0-30分・30-60分・60-90分・90-120分・120-150分・150-180分・180分以上

12. 臨時休校前の1日あたりの平日の勉強時間※学校の宿題以外

0-30分・30-60分・60-90分・90-120分・120-150分・150-180分・180分以上

13. 臨時休校中の1日あたりの平日の勉強時間※学校の宿題以外

0-30分・30-60分・60-90分・90-120分・120-150分・150-180分・180分以上

14. 臨時休校前の1日あたりの休日の宿題時間

0-30分・30-60分・60-90分・90-120分・120-150分・150-180分・180分以上

15. 臨時休校中の1日あたりの休日の宿題時間

0-30分・30-60分・60-90分・90-120分・120-150分・150-180分・180分以上

16. 臨時休校前の1日あたりの休日の勉強時間※学校の宿題以外

0-30分・30-60分・60-90分・90-120分・120-150分・150-180分・180分以上

17. 臨時休校中の1日あたりの休日の勉強時間※学校の宿題以外

0-30分・30-60分・60-90分・90-120分・120-150分・150-180分・180分以上

18. 臨時休校前には使っていらなかった新しい教材を使っている

はい・いいえ

19. 宿題の自主性を0~10で表してください(臨時休校前)

全く自主的でない 0・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 とても自主的だ

20. 宿題の自主性を0~10で表してください(臨時休校中)

全く自主的でない 0・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 とても自主的だ

21. 宿題を終えた達成感を0~10で表してください(臨時休校前)

全く感じていない 0・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 とても感じている

22. 宿題を終えた達成感を0~10で表してください(臨時休校中)

全く感じていない 0・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 とても感じている

23. 勉強に対するモチベーションを0~10で表してください(臨時休校前)

全く感じていない 0・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 とても感じている

24. 勉強に対するモチベーションを0~10で表してください(臨時休校中)

全く感じていない 0・1・2・3・4・5・6・7・8・9・10 とても感じている

25. 臨時休校中に使われている学校の宿題の教材はどのようなものか

 

2020年5月25日